Recipe of Life | フードスタイリスト、フードコーディネーター河合真由子 東京

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盛りつけと食器が売上を変える理由、認知心理学から見た食の体験設計の考え方

盛りつけと食器が売上を変える理由、認知心理学から見た食の体験設計の考え方
「おいしい料理を出せば売れる」。これは正しいですが、十分ではありません。

人が「おいしい」と感じる体験の大部分は、実際に口に入れる前の段階で形成されています。視覚・触覚・聴覚・嗅覚——食べる前に受け取るあらゆる感覚情報が、味覚の知覚に影響を与えます。

この事実を科学的に解明してきたのが、オックスフォード大学のチャールズ・スペンス教授です。彼が提唱する「ガストロフィジックス(gastrophysics)」という学問領域は、食の体験を科学の視点から解析し、飲食業界・食品業界に革命をもたらしつつあります。

ガストロフィジックスとは何か

ガストロフィジックスとは、「食べることと飲むことの多感覚体験に影響を与える要因を科学的に研究する学問」です(Spence, 2017)。スペンス教授はオックスフォード大学のクロスモーダル研究室を率い、20年以上にわたって「食の体験がどのように形成されるか」を研究してきました。

彼の研究が明らかにしたのは、味覚は舌だけで決まるのではなく、視覚・触覚・聴覚・嗅覚が複合的に影響し合う「多感覚統合(multisensory integration)」によって形成されるということです。

参考文献

Spence, C. (2017). Gastrophysics: The New Science of Eating. Penguin UK.
(邦訳:ガストロフィジックス——おいしさの科学、KADOKAWA、2018)

Spence, C., & Piqueras-Fiszman, B. (2014). The Perfect Meal: The Multisensory Science of Food and Dining. Wiley-Blackwell.

食べる前においしさは決まっている——期待値形成のメカニズム

人は食べる前から「おいしさ」を判断しています。視覚刺激——料理の色・形・盛りつけの美しさ——が過去の味覚・嗅覚の記憶と結びつき、食べる前から期待値が形成されます。この期待値が「おいしさの知覚」を大きく左右します。

CORE INSIGHT

期待値を上回れば「おいしい」と感じやすく、期待値を下回れば「なんか違う」という印象を残します。同じ料理でも、どう見せるかによって「おいしさ」の知覚は変わります。これがガストロフィジックスの核心であり、飲食業・食品業にとって最も重要な示唆です。

盛りつけが売上を変える——カンディンスキー実験

この事実を最も劇的に示した研究が、Michelら(2014)による実験です。同じ食材・同じ量のサラダを3種類の盛りつけで提供し、評価と支払い意欲を測定しました。

3種類の盛りつけによる比較実験

通常のトスサラダ(混ぜただけ)

整然と並べたサラダ(丁寧だが美的でない)

カンディンスキーの絵画にインスパイアされた芸術的な盛りつけ

結果:カンディンスキー風の盛りつけは他の2つと比べて、料理の評価が高く、支払い意欲も大幅に上回りました。同じ食材・同じ味でも、盛りつけによって「おいしさ」の知覚と支払い意欲が変わることが実証されました。

また、Deroyら(2014)による「The Plating Manifesto」は、盛りつけを「装飾」ではなく「食体験の創造」として位置づけ、視覚的な食の演出が認知に与える影響を理論化しました。

参考文献

Michel, C., Velasco, C., Gatti, E., & Spence, C. (2014). A taste of Kandinsky: assessing the influence of the artistic visual presentation of food on the dining experience. Flavour, 3(1), 7.

Deroy, O., Michel, C., Piqueras-Fiszman, B., & Spence, C. (2014). The plating manifesto (I): from decoration to creation. Flavour, 3(1), 1-11.

食器・カトラリーが味覚を変える

盛りつけだけではありません。料理を盛る器・カトラリーも、味覚の知覚に影響を与えます。

皿の色と味覚の関係

丸い白い皿に盛ったデザートは、同等の黒い皿と比べて10%甘く感じられることが示されています(Spence & Piqueras-Fiszman, 2014)。赤い器はポップコーンを実際より甘く感じさせ、青い器は食欲を抑制する傾向があります。

カトラリーの重さと満足度

Harrar & Spence(2013)は、カトラリーの重さが料理の評価に影響することを示しました。軽いプラスチックのスプーンで食べたヨーグルトより、重いスプーンで食べたヨーグルトの方が「濃厚でおいしい」と感じられました。さらにMichelら(2015)は、重いカトラリーを使うことで料理の芸術的評価・好感度・支払い意欲がいずれも上昇することを、実際のレストラン環境で実証しました。

参考文献

Spence, C., & Piqueras-Fiszman, B. (2014). The Perfect Meal: The Multisensory Science of Food and Dining. Wiley-Blackwell.

Harrar, V., & Spence, C. (2013). The taste of cutlery: how the taste of food is affected by the weight, size, shape, and colour of the cutlery used to eat it. Flavour, 2(1), 21.

Michel, C., Velasco, C., & Spence, C. (2015). Cutlery matters: heavy cutlery enhances diners' enjoyment of the food served in a realistic dining environment. Flavour, 4(1), 1.

飲食店・食品ブランドへの応用

盛りつけを「コスト」ではなく「投資」として捉える

同じ食材でも盛りつけによって評価と支払い意欲が変わるなら、盛りつけの設計は売上に直結する投資です。メニューの味だけでなく、視覚的な演出を設計することが、客単価と顧客満足度を同時に上げます。

食器選びを「好み」ではなく「設計」として行う

器の色・形・重さは、料理の知覚に影響します。「なんとなく合いそう」ではなく、「この料理のどの要素を強調したいか」という視点で食器を選ぶことが、食体験の設計です。

スタッフへの共通言語を作る

「なんとなくきれい」ではなく「なぜこの盛りつけが効くか」を言語化し、チームに展開することで、店舗全体の品質が安定します。

Recipe of Lifeのアプローチ

認知心理学・知覚心理学の研究知見を食の体験設計に活かすことが、Recipe of Lifeの核心的な強みです。「なぜこの盛りつけがおいしく見えるのか」「なぜこの食器でこの料理がより輝くのか」を科学的に説明しながら、飲食店・食品ブランドの視覚設計を支援します。

盛りつけや食器選びは、センスや感性によるものと捉えがちですが、ビジネスの世界においてはそれを共通言語に置き換えることが必要です。弊社では、言葉にできない感性の世界を論理的に説明し、企業のマニュアルや研修として活用いただいております。

盛りつけ研修や、盛りつけ・食器などの売上アップに繋がるコンサルティングサービスを通して、企業における売上や顧客体験の向上のご支援をおこなっております。


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河合 真由子
Mayuko Kawai
フードスタイリスト / フードコンサルタント
岐阜県出身
大学卒業後、流通業界に就職。販促企画、VMDなどを経験。その後、海外で飲食店の出店支援やカフェの立ち上げに携わる。帰国後、フードコーディネーター養成スクールを経て独立。雑誌、CM、広告のスタイリング、フードコーディネート、飲食店へのメニュー提供、飲食コンサルティングを行う。
めざましTVのお仕事がきっかけで朝型のライフスタイルにめざめ、朝ごはんメニューの提案と朝の時間をもっとたのしみたい女子の朝活コミュニティ「とっておきの朝食会」を主催。
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