近年、食物アレルギーやアナフィラキシーに対する対応が外食産業でも強く求められる時代になりました。
背景には、アレルギーを持つ人の増加とともに、外食での誤食事故が相次ぎ、SNSによる情報拡散リスクが高まっていることがあります。
一方で、アレルギー対応を丁寧に行う店舗は、「安心して選ばれるお店」としてリピーターが増える傾向もあります。
食の安全は「リスク管理」であると同時に、「信頼とブランド価値を生む経営戦略」でもあります。
外食産業では、仕入れ・加工・調理・提供に複数の人が関わるため、従業員一人ひとりの理解とチーム全体の情報共有が不可欠です。
とくに近年は、ナッツや乳製品など微量摂取でも重篤化しやすいアレルゲンが増えていることから、より細やかな対応が求められています。
食品アレルギーについては、主に食品表示法とそれに基づく政令・省令・基準により以下の通り表示が義務付け、推奨されています。
現在、必ず表示しなければならない(義務表示)とされている特定原材料は下記の 8品目 です。
(2023年3月「くるみ」追加、2025年3月31日までの経過措置終了)
品目 | 対象・補足 |
---|---|
えび | えび類全般 |
かに | かに類全般 |
くるみ | 義務化済。木の実類アレルギーの主因となる |
小麦 | グルテン含有の有無を問わず対象 |
そば | そば粉、加工品含む |
卵 | 鶏・うずら・あひる等の卵製品 |
乳 | 牛乳由来成分全般 |
落花生(ピーナッツ) | 加工品・油脂含む |
義務表示ではないものの、可能な範囲で 表示することが推奨 されている品目です。これを「特定原材料に準ずるもの」と呼びます(20品目)
品目 | 備考・範囲 |
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アーモンド | アーモンドおよびオイル・ミルク等も対象 |
あわび | |
いか | 各種イカ類を含む |
いくら | さけ・ます類の卵巣を塩蔵したもの、すじこも含む |
オレンジ | ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ等(ただし、うんしゅうみかん等除外) |
カシューナッツ | |
キウイフルーツ | |
牛肉 | 肉、内臓、動物脂(真皮層を含むもの)等を含む範囲 |
ごま | ごま(種皮の色の違いにかかわらず)、ごま油・練りごま等も含む |
さけ | 養殖・河川系のさけ・ます類 |
さば | まさば、ごまさば等 |
大豆 | 大豆そのもの、発芽物も含む |
鶏肉 | 鶏の肉類全般 |
バナナ | |
豚肉 | |
マカダミアナッツ | 2024年改正で追加された品目 |
もも | |
やまいも | 自然薯、ながいも、つくねいも等 |
りんご | |
ゼラチン | 主に牛・豚由来のゼラチン製品 |
ナッツ類は一種に反応がある人が他のナッツにも反応する可能性が高いのが特徴です。
また、ナッツを使用していなくても、焼き菓子・アイス・グラノーラなどに含まれるナッツオイルや粉末(アーモンドプードル等)による誤食も多く報告されています。
少量でもアナフィラキシーを起こすケースがあり、特に慎重な対応が必要です。
アレルギー食材を摂取した場合の症状の出方についても知っておきましょう。 軽度の場合は、かゆみや蕁麻疹がでる場合があります。異常を感じた時点で、すぐに食べたものについて確認をとることが大切です。(原因の特定に役立ちます。)
また重篤な場合は、呼吸困難やアナフィラキシーといって、血圧低下や意識障害を伴う症状がでることがあります。
お客様ご本人も気づいていない潜在的アレルギーがある点にも注意が必要です。
以上の知識を踏まえて、飲食店がアレルギー対策をするうえでどのような方向性で
対応するのがよいのでしょうか?3つのポイントに絞って以下のとおりまとめました。
仕入れる食材ごとに、食品表示ラベルを確認しアレルギー食材の使用有無について確認することが大切です。またその情報をもとに、提供するメニューごとにアレルギー食材使用の有無を明記した一覧表をつくり、社内で共有することも大切です。
仕入れ商品によっては表示ラベルが明確でない場合があります。その場合は、必ずサプライヤーに対して情報提供を求めることも大切です。できれば、アレルゲン含有有無について聞くのではなく、必ず使用原材料レベルで確認することも大切です。(万一アレルゲン使用有無について間違った情報が流れてくると危険なため、必ず使用食材レベルで確認することが大切です。)
お客様に聞かれた際に、すぐに答えられるように体制を整えましょう。
サービス係はもちろんですが、メニュー表示や店頭ポスターなどにも表示があるとわかりやすいです。特に、近年は海外からのお客様も増えています。言葉が通じなくて間違って食べてしまったということにならないように、誰でもみてわかるイラスト表示を取り入れるのも一つの方法です。
当店では同一厨房内で卵・小麦・乳などのアレルゲンを扱っております。
調理・洗浄には最善を尽くしておりますが、微量混入の可能性を完全に排除することはできません。
食物アレルギーをお持ちの方はご注文前にスタッフへお申し出ください。
(※出典:消費者庁「外食事業者のための食物アレルギー対応指針」)
もう一つ重要なのが、アレルギー除去は完全ではないことです。メニュー自体にアレルゲンとなる食材を使用していなくても、同じ厨房環境で卵や小麦などアレルゲンとなる食材を扱って調理することが往々にあります。その場合、完全除去ではないことを明確にお客様に示す必要があります。
厨房は完全分離ではないため完全除去とはいえないため、リスク回避のためにも最終的にはお客様の判断で喫食していただくことを申し添える必要はあります。
月1回のスタッフ勉強会を実施し、全員が最新情報を共有。アレルギー対策は、従業員の習熟度に左右される問題でもあります。「知らなかった」では済まされないため、テスト形式の確認も有効です。
万一の発症時に備え、**「救急要請+アレルゲン除去指示+報告書作成」**の流れをマニュアル化。
📄 東京都:[アレルギー救急マニュアル(PDF)](https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/pri20.pdf)
コンタミネーションとは、意図せずにアレルゲン(卵・乳・ナッツなど)が他の食品に混入してしまうことを指します。例えば、同じまな板や揚げ油、トングなどを使ったことで微量のアレルゲンが移る場合があり、重いアレルギー反応を起こす危険があります。飲食店においては、完全分離な厨房でない環境がほとんどですが、現実的に対応できる範囲での対応はやはり求められます。
具体的にどういった対応をしたらいいのか、またできるのかを以下簡単にまとめました。
同一キッチン内でアレルゲン含有食材を扱う場合
→ 器具・油・揚げ鍋・まな板の共有に注意
専用トング・包丁・まな板を色分け管理
スタッフの手洗い・手袋交換を徹底
→ その他、ラップを台にひいた上で割卵をおこなうなど、「完全除去ではないが最大限努力している」姿勢を明示することがお店側としての誠実な対応といえるでしょう。
厨房導線にも工夫の余地はあります。例えば、
することでコンタミネーションの防止策にもなりえます。
実際に店舗を運営する上で、アレルギー対応について以下のような項目をリスト化して日々確認することをおすすめします。
アレルギー対応は、メニューが変更となるたびに常時アップデートも必要になり、確かに簡単な作業ではないかもしれません。ただし、きちんと対応をしていることで下記のようなメリットもあります。
完全対応が難しい店舗環境でも、できる限りの工夫と誠実な情報開示が信頼を生みます。
定期的な教育・マニュアル更新・お客様との誠実な対話を通じて、
「安全を提供する」という価値そのものが、お店のブランドを強くしていきます。
食の安全を守ることは、「お客様を大切にすること」。
今日からできる一歩を、チーム全体で始めてみましょう。📩 ご相談はこちら
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「アレルギー対応のメニュー開発」「アレルギー対応含めた厨房動線設計」「現場マニュアル整備」など、
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